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大人のための再学習:なぜラジオやテレビが受信できるのか?(電波の基礎)

Tags: 電波, 無線通信, 物理, 技術史, 電磁波

身の回りの見えない「波」

私たちは日々の暮らしの中で、ラジオを聴いたり、テレビを見たり、携帯電話で話をしたりしています。これらはすべて、遠く離れた場所から送られてくる「見えない何か」を受け取ることで実現しています。この「見えない何か」こそが、「電波」と呼ばれるものです。

電波は、光やX線と同じように、実は「電磁波」の一種です。電磁波は、電気と磁気の変化が互いに影響し合いながら空間を伝わる波です。光は目に見える電磁波ですが、電波は私たちの目には見えない、より長い波長の電磁波なのです。

電波はどのようにして情報を運ぶのか

では、この見えない電波が、どのようにして音声や映像といった複雑な情報を運んでいるのでしょうか。

まず、情報を電波に乗せるためには、「変調」という操作を行います。これは、情報(音声信号や映像信号)を、電波の性質(波の高さ、波の数、波の形など)の変化として表現することです。例えば、ラジオ放送では、音声信号に合わせて電波の波の数を変えたり(周波数変調:FM)、波の高さを変えたり(振幅変調:AM)します。

次に、変調された電波は、送信用のアンテナから空間に放出されます。アンテナは、電気信号を効率よく電波として空間に送り出すための装置です。電波は空間中を光と同じように高速で伝わります。

そして、私たちリスナーや視聴者のところにある受信用のアンテナが、空間を伝わってきた電波を捉えます。受信アンテナは、電波が通過する際に生じる微弱な電気信号を拾い上げるのです。

最後に、受信した信号から、情報を電波に乗せる際に加えられた変化(変調)を元に戻す「復調」という操作を行います。この復調によって、元の音声信号や映像信号が取り出され、スピーカーから音が出たり、画面に映像が映し出されたりするわけです。

電波の「周波数」とその使い分け

電波には様々な種類があり、その違いの一つに「周波数(しゅうはすう)」があります。周波数とは、1秒間に電波の波が繰り返される回数のことです。周波数が高い電波もあれば、低い電波もあります。

この周波数の違いによって、電波の性質や用途が変わってきます。

電波の周波数は有限な資源であり、混信を防ぐために国によって利用ルールが定められています。私たちが様々な無線サービスを利用できるのは、それぞれのサービスに決められた周波数が割り当てられているからです。

電波の発見と現代社会

電波の存在は、19世紀後半にジェームズ・クラーク・マクスウェルという物理学者によって理論的に予言され、後にハインリヒ・ヘルツという科学者によって実験的に証明されました。そして、グリエルモ・マルコーニらが無線通信の実用化に成功し、瞬く間に世界中に広まりました。

初期の電報から始まり、ラジオ、テレビ、そして今日のインターネットや携帯電話へと、電波を利用した技術は私たちの生活や社会を大きく変えてきました。GPSによる位置情報サービスや、電子レンジ、医療分野での画像診断など、電波の利用範囲はさらに広がっています。

まとめ

ラジオやテレビが受信できるのは、見えない電波が情報を運び、それをアンテナで受け取り、元の情報に戻す仕組みがあるからです。電波が電磁波の一種であること、周波数によって性質が異なり様々な用途に使われていること、そしてその発見が現代社会にもたらした影響について見てきました。

身の回りの無線通信技術も、もとをたどれば電波という基礎的な科学に基づいています。科学の視点を持つことで、何気ない日常の風景も少し違って見えてくるかもしれません。