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大人のための再学習:なぜ飛行機は空を飛ぶのか?(物理学の基礎)

Tags: 飛行機, 物理, 揚力, 空気力学, ベルヌーイの定理

導入:空を飛ぶ不思議

私たちが気軽に飛行機に乗って遠くまで旅をするのが当たり前になった現代。しかし、あの巨大で重い金属の塊が、なぜ地上から離れて空を舞い上がることができるのでしょうか。改めて考えてみると、不思議に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

若い頃に理科や物理が少し苦手だった、という方もご安心ください。ここでは、飛行機が空を飛ぶための基本的な原理を、難しい数式を使わずに、大人の視点でじっくりと学び直してみましょう。

飛行機に働く四つの力

飛行機が空を飛ぶためには、主に四つの力が関わっています。

  1. 重力(Gravity): 地球が飛行機を下に引きつける力です。飛行機の重さそのものと考えても良いでしょう。
  2. 推力(Thrust): エンジンが空気などを後ろに噴き出すことで生まれる、飛行機を前へ進ませる力です。
  3. 抗力(Drag): 空気の抵抗によって、飛行機の進行方向とは逆向きに働く力です。
  4. 揚力(Lift): これこそが、飛行機を空中に持ち上げる最も重要な力です。飛行機の翼の働きによって生まれる、上向きの力のことです。

飛行機は、この四つの力がバランスを取りながら、空を飛んでいます。前に進む力(推力)が空気抵抗(抗力)に打ち勝ち、そして、上向きの力(揚力)が飛行機の重さ(重力)に打ち勝つか、少なくともバランスを取ることで、空中に留まったり上昇したりできるのです。

特に重要な「揚力」は、一体どのように生まれるのでしょうか。

揚力はどこから生まれるのか?

揚力が生まれる鍵は、飛行機の「翼」の形と、そこを流れる「空気」にあります。飛行機の翼を横から見てみると、上面が少し丸く膨らんでいて、下面は比較的平らな形をしているのが一般的です。この独特の形が、揚力を生み出す秘密です。

飛行機が前進すると、翼に空気が当たります。この空気は、翼の上面と下面に分かれて流れます。

ここで、「ベルヌーイの定理」という物理の法則が関係してきます。ベルヌーイの定理は、「流体(空気や水)が速く流れる場所では、その場所の圧力が低くなる」というものです。

つまり、翼の上面では空気が速く流れるため、圧力が低くなります。一方、下面を流れる空気は比較的ゆっくり流れるため、圧力はそれほど下がりません。

結果として、翼の下面の圧力の方が上面の圧力よりも高くなります。この圧力の差によって、翼は下から上に押し上げられる力を受けます。これが「揚力」です。

分かりやすい例えとしては、紙を机の上に置き、その紙の上から強く息を吹きかけると、紙が少し持ち上がる現象に似ています。息を吹きかけた上の空気の速度が上がり、圧力が下がるために起こります。

また、飛行機の翼は水平ではなく、進行方向に対して少し上向きの角度(「迎え角」といいます)をつけていることもあります。この角度によって、空気の流れを下向きに変えることができ、その反作用として上向きの力(揚力)が発生するという側面もあります。

現代社会と飛行機

飛行機が空を飛ぶ原理は、物理学の基本的な法則に基づいています。揚力という力が、重力に打ち勝つ、あるいはバランスを取ることで、あの巨体が空中に浮かび上がることができるのです。

ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功してから100年余り。この間に、飛行機は目覚ましい進化を遂げました。空気力学(空気が物体に及ぼす力を研究する分野)や材料科学、エンジンの技術などが進歩し、より速く、より遠くへ、より多くの人や物を運べるようになりました。

飛行機は、世界中の人々の移動を容易にし、国際的な交流や経済活動を活発にしました。遠く離れた場所の物産が手に入りやすくなったのも、飛行機による空輸技術の発展のおかげです。

日常生活ではあまり意識しないかもしれませんが、飛行機が空を飛ぶ裏側には、重力、推力、抗力、そして揚力という四つの力の絶妙なバランスと、それを可能にする科学技術の積み重ねがあるのです。

まとめ

今回は、「なぜ飛行機は空を飛ぶのか?」という疑問から、飛行機に働く基本的な力と、特に揚力がどのように生まれるのかについて見てきました。

身近な乗り物である飛行機にも、私たちの基礎的な科学の知識が活かされています。少しでも科学への興味が深まっていただけたなら幸いです。

次回も、日常生活に隠された科学の不思議を探求していきましょう。