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大人のための再学習:なぜ虹はできるのか?(光の基礎)

Tags: 物理, 光, 虹, 気象, 自然現象

虹のふしぎ、大人になって学ぶ光の基本

空に美しい七色のアーチがかかる「虹」。子供の頃、雨上がりの空に虹を見つけて、思わず立ち止まった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。その美しさに心を奪われる一方で、「なぜあんなにきれいな色が見えるのだろう?」「どうして雨上がりにしか見えないのだろう?」といった素朴な疑問を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。

この虹という自然現象は、実は私たちの身近にある「光」の基本的な性質によって生まれています。今回は、大人の視点から、この虹ができる仕組みを基礎から丁寧に見ていきましょう。

虹が現れる条件

虹を見るためには、いくつかの条件が必要です。

光は様々な色の集まり

まず、光について考えてみましょう。普段私たちが目にしている太陽の光(白色光)は、実は単一の色ではありません。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫といった、様々な色の光が混ざり合って白く見えているのです。これを「光のスペクトル」と呼びます。

このことは、ガラスのプリズムを通すと白い光が七色に分かれる実験でよく知られています。虹ができる仕組みも、これと似ています。

水の粒の中での光の振る舞い

雨のしずくのような水の粒に太陽の光が当たると、光はどのように振る舞うのでしょうか。

  1. 屈折(曲がる): 光が空気から水の粒の中へ入る時、そして水の中から空気へ出て行く時に、光の進む方向が曲がります。これを「屈折」と言います。まるで、水中眼鏡越しに見ると物の位置が少し違って見えるのと同じ現象です。
  2. 反射(跳ね返る): 水の粒の中に入った光の一部は、水の粒の奥側の表面で跳ね返ります。これを「反射」と言います。

虹ができるためには、この「屈折」と水の粒の奥側での「反射」、そして再び水の中から空気へ出る時の「屈折」という二段階の屈折と一度の反射が関わっています。

なぜ七色に分かれるのか?:光の分散

ここで、光の屈折には一つ重要な性質があります。それは、「色によって光の曲がり具合(屈折率)が少しずつ違う」ということです。例えば、紫色の光は赤色の光よりも大きく曲がります。

水の粒の中で光が屈折する際、太陽光に含まれる様々な色の光が、それぞれ異なる角度で曲がります。水の粒に入るときに一度、出て行くときに一度、合計二度の屈折を経ることで、色の違いによる曲がり具合の差が大きくなり、七色の光が分かれて見えるようになるのです。この現象を「光の分散」と呼びます。

水の粒を通過して分かれた七色の光が、私たち観察者の目に届くことで、虹として認識されるのです。特定の角度で見える光がその色の光だけであるため、空に七色の帯が見えることになります。

二重の虹:主虹と副虹

たまに、主に見える虹(主虹)の外側にもう一つ、色の並びが逆になった薄い虹が見えることがあります。これを「副虹」と呼びます。

副虹は、水の粒の中で光が二回反射することで生まれます。反射回数が増えるため光のエネルギーが弱まり、主虹よりも薄く見えます。また、反射の回数が違うため、色の並びも主虹とは逆になります。

大人の視点で考える虹

虹の仕組みは、今から約300年以上前に、アイザック・ニュートンという科学者がプリズムを使った実験によって詳しく解明しました。彼は、太陽光が様々な色の光の集まりであることを示し、それが分散することによって虹ができることを説明したのです。

虹の仕組みは、私たちの身近なところにも応用されています。例えば、CDやDVDの表面が光って七色に見えるのも、表面の微細な溝がプリズムのような働きをして光を分散させているためです。また、美術館などで見るステンドグラスが様々な色に見えるのも、ガラスの種類や厚みによる光の透過・屈折の性質を利用しています。

虹は単なる美しい自然現象ではなく、光の基本的な性質である「屈折」「反射」「分散」を私たちに見せてくれる、壮大な自然の実験と言えるでしょう。

まとめ:日常に隠された科学

雨上がりに空を見上げ、虹を見つけたとき、その色の美しさに加えて、「ああ、これは太陽の光が雨のしずくで曲がって、色ごとに分かれて見えているんだな」と、その仕組みに思いを馳せてみるのも、大人ならではの学びの楽しみ方ではないでしょうか。

普段何気なく見ている自然現象の中に、物理学の基礎が隠されている。そう気づくと、世界が少し違って見えるかもしれません。今回の記事が、皆さんが日常の中にある科学の不思議に目を向けるきっかけとなれば幸いです。