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大人のための再学習:なぜ温度計は温度がわかるのか?(熱と物質の基礎)

Tags: 物理, 熱, 物質, 温度, 基礎

なぜ温度計は温度を測れるのでしょうか?

私たちの周りには、温度計が様々な場所で使われています。天気予報で外の気温を知るため、料理の際に正確な温度を測るため、あるいは体の具合が悪いときに熱がないか確認するためにも使われます。とても身近な道具ですが、「なぜ温度計は温度がわかるのだろうか?」と考えたことはおありでしょうか。

この記事では、特に昔からよく使われている棒状の温度計を例に、温度を測る仕組みと、そこに隠された科学の基礎について、大人の視点でじっくりと紐解いていきます。

そもそも「温度」とは何でしょうか?

科学の世界では、「温度」は物質を構成している小さな粒(原子や分子)の運動の激しさを表す指標と考えられています。

水が液体、固体(氷)、気体(水蒸気)と姿を変えるように、どのような物質でも、実はたくさんの小さな粒が集まってできています。これらの粒は、常に細かく振動したり、動き回ったりしています。

物質が「熱い」とき、粒子の動きは激しくなります。逆に「冷たい」とき、粒子の動きは穏やかになります。つまり、温度が高いほど粒子の運動エネルギーが大きい、ということなのです。温度計は、この目に見えない粒子の運動の激さを、何らかの形で「見える化」する道具と言えます。

棒状温度計の仕組み:熱膨張を利用する

私たちがよく目にする、ガラス管の中に色のついた液体が入っているタイプの温度計(アルコール温度計など)は、「熱膨張」という現象を利用しています。

熱膨張とは、物質が温められると体積が大きくなる性質のことです。これは、先ほどお話しした粒子の運動に関係しています。温度が上がって粒子の動きが激しくなると、粒子同士の間隔が少し広がり、その結果として物質全体の体積が増加するのです。

棒状の温度計には、温度によって体積が大きく変化する液体(かつては水銀が使われましたが、現在は安全性の高いアルコール色素液が主流です)が少量入っています。この液体は、下の丸い部分(液だめ)と、それに繋がった非常に細いガラス管の中に入っています。

逆に、周りの温度が低くなると、液体の粒子の動きが穏やかになり、体積が小さくなります。その結果、細いガラス管の中の液面は下がります。

この「液面の高さの変化」が、「温度の変化」としてガラス管に刻まれた目盛りによって読み取れるようになっているのです。

他の温度計も少しだけ

棒状温度計以外にも、様々な原理を利用した温度計があります。

温度計の歴史と私たちの暮らし

温度を測る道具の歴史は古く、16世紀末にはイタリアのガリレオ・ガリレイが、空気の熱膨張を利用した原始的な温度計(温度を測る器械、という意味で「温度計」と訳されることもあります)を発明したとされています。その後、液体温度計が発展し、現在の形の基礎ができました。

温度を正確に測れるようになったことで、私たちの生活は大きく変わりました。

料理をする際も、例えば揚げ物の油の温度やパン生地の発酵温度など、レシピに示された温度を正確に守ることで、美味しく仕上げることができますね。

まとめ

温度計は、私たちの周りにある様々な現象の「熱さ・冷たさ」を数値として捉えるための道具です。その基本的な仕組みは、物質が温度によって体積を変える「熱膨張」という、ごく基礎的な物理や化学の法則に基づいています。

温度計の歴史を知り、その仕組みを理解することは、身近な道具の中に隠された科学の知恵に触れる良い機会となります。そして、温度という概念が、気象、医療、工業、日々の料理まで、いかに私たちの暮らしと深く結びついているかを改めて感じることができます。

ぜひ、身の回りの温度計を見かけた際に、この記事でご紹介した内容を思い出してみてください。きっと、少し違った見え方がするのではないでしょうか。