大人のための再学習:なぜ月は形を変えるのか?(月の満ち欠けの基礎)
毎晩空を見上げると、お月様の形が日々変わっていることに気づかれるかと思います。細い三日月だったかと思えば、やがてまん丸の満月になり、また少しずつ欠けていく。この月の形の変化は、古来より多くの人々を魅了し、暦や文化にも大きな影響を与えてきました。
では、なぜ月はいつも同じ形ではなく、まるで誰かが削っているかのようにその姿を変えるのでしょうか。今回は、この月の「満ち欠け」という現象の基本的な仕組みについて、一緒に確認していきましょう。
月は自分で光っているわけではありません
まず、月の満ち欠けを理解する上で最も大切なポイントは、月が自分自身で光を出しているわけではない、ということです。夜空で輝く月は、太陽の光を受けて、その光を反射しているから明るく見えているのです。これは、地球上の私たちが鏡に光を当てると反射して見えるのと同じ原理です。
位置関係が月の形を変える
月の形が変わって見えるのは、地球の周りを月が回っている(公転といいます)ことと、太陽、地球、月の位置関係が常に変化しているためです。
太陽の光は常に月の一方の面(太陽が当たっている側)を照らしています。地球から月を見たとき、この太陽の光が当たっている面が、どれだけ見えているかによって月の形が変わって見えるのです。
例えるなら、暗い部屋でライト(太陽)をつけたとき、ボール(月)を手に持って自分の周りを回るようなものです。ボールのライトが当たっている部分が、自分(地球)から見てどれくらい見えるかが変化していく様子をイメージしてみてください。
月の満ち欠けのサイクル
月は地球の周りを約1ヶ月(正確には約27.3日ですが、満ち欠けのサイクルは約29.5日です)かけて一周しています。この間に、太陽、地球、月の位置関係が様々に変化し、満ち欠けとして観察されます。
- 新月(しんげつ): 太陽と月の間に地球が位置し、月の太陽に照らされている側が地球から見て全く見えない状態です。この日は月が見えません。
- 三日月(みかづき): 新月の数日後、西の空に細い月が見え始めます。太陽に照らされた部分が少しだけ地球から見える状態です。
- 上弦の月(じょうげんのつき): 新月から約7日後、月の右半分(北半球の場合)が光って見える半月になります。太陽の光が真横から当たっているイメージです。
- 満月(まんげつ): 新月から約14日後、地球を挟んで太陽と月がほぼ一直線に並んだ状態です。月の太陽に照らされている側が全て地球から見えるため、丸い形に見えます。
- 下弦の月(かげんのつき): 満月から約7日後、月の左半分(北半球の場合)が光って見える半月になります。上弦の月とは反対側が光っています。
- これから新月へ: 下弦の月の後、月はさらに細くなり、やがて見えなくなって新月に戻ります。
このように、月の満ち欠けは、月そのものが変形したり、光ったり消えたりしているわけではなく、単に地球から見たときに、太陽に照らされた月の面がどれくらい見えるかという、シンプルながらも壮大な位置関係の変化によって起こる現象なのです。
日常生活とのつながり
月の満ち欠けのサイクルは約1ヶ月であることから、私たちはこれを基準に「暦(こよみ)」を作ってきました。太陰暦(たいいんれき)や太陰太陽暦(たいいんたいようれき)は、月の満ち欠けをもとに作られた暦です。また、潮の満ち引きも、主に月の引力によって引き起こされる現象であり、月の満ち欠けと密接に関係しています。
空を見上げて月の形を見れば、地球と月と太陽が宇宙空間でどのような位置関係にあるのか、そして約1ヶ月という時間をかけてどのような旅をしているのかを想像することができます。
まとめ
月の満ち欠けは、月が太陽の光を反射していることと、地球の周りを公転していることによって、地球から見た月の太陽光が当たっている部分の見え方が変化するために起こります。新月、上弦の月、満月、下弦の月と約1ヶ月かけて変化するこの姿は、宇宙におけるシンプルな位置関係が織りなす自然の営みです。
次に月を眺めるときは、その形から宇宙での位置関係を少し想像してみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。