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大人のための再学習:なぜ血は赤いのか?(生物・化学の基礎)

Tags: 生物, 化学, 血液, ヘモグロビン, 体の仕組み

なぜ、私たちの血液は赤いのでしょうか?

私たちの体の中を流れる血液は、生命活動に欠かせない大切なものです。そして、その色は誰もが知るように「赤色」をしています。ケガをしたとき、指先をちょっと切ってしまったとき、あるいは健康診断で採血されるときなど、私たちは日常的に血液の色を目にします。

しかし、なぜ血液は赤い色をしているのでしょうか? この素朴な疑問には、私たちの体で行われている、驚くほど精密な仕組みが隠されています。今回は、血液が赤い理由を、生物と化学の視点から少し掘り下げて考えてみましょう。

血液の赤色の秘密は「ヘモグロビン」

血液が赤いのは、主に赤血球という細胞に含まれる「ヘモグロビン」というタンパク質の色によるものです。赤血球は血液の中で最も数が多い細胞で、私たちの体のすみずみに酸素を運ぶという重要な役割を担っています。

このヘモグロビンこそが、血液の色の「主役」なのです。ヘモグロビンは、非常に複雑な形をした大きなタンパク質ですが、その中心部分には、鉄原子がくっついた構造があります。

鉄原子と酸素が色の鍵

血液の赤色は、このヘモグロビンに含まれる「鉄原子」と、それが運ぶ「酸素」の状態によって決まります。

  1. 酸素が多いとき: 肺で酸素を取り込んだ血液は、酸素とヘモグロビンが結合します。このとき、ヘモグロビンに含まれる鉄原子が酸素と結びつくことで、ヘモグロビンの構造が変化し、光の吸収の仕方が変わります。酸素と結合したヘモグロビンは、鮮やかな「動脈血」の色、つまり明るい赤色に見えます。

  2. 酸素が少ないとき: 体の各組織で酸素を使い果たした血液は、ヘモグロビンから酸素が離れています。酸素が離れたヘモグロビンは、酸素と結合しているときとはまた異なる構造になり、これも光の吸収の仕方が変わります。酸素が少ないヘモグロビンは、少し暗い赤色に見えます。これが「静脈血」と呼ばれる血液の色です。

私たちの血管を腕などで見てみると、青っぽく見えることがあります。これは、静脈血が流れている血管が皮膚を通して見えているためです。血管自体の色が青いわけではなく、少し暗い赤色の静脈血が、皮膚や血管の壁を透かして光が反射・吸収されることで、私たちの目には青っぽく映るのです。

鉄分の重要性と貧血

ヘモグロビンが酸素を運ぶためには、中心にある鉄原子が欠かせません。もし、食事から十分な鉄分を摂取できないと、ヘモグロビンを十分に作ることができなくなります。すると、体中に酸素を運ぶ能力が低下してしまい、体がだるく感じたり、息切れしやすくなったりします。これが「鉄欠乏性貧血」と呼ばれる状態です。

このように、血液が赤い色をしているという一見単純なことの中にも、ヘモグロビンというタンパク質の精密な働きや、鉄という元素の役割、そしてそれが私たちの健康にどう関わっているかといった、様々な科学の知識が詰まっています。

まとめ

血液が赤いのは、赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質の色であり、その色はヘモグロビンに含まれる鉄原子が酸素と結びついているかどうかで変化します。酸素と結合していると明るい赤色(動脈血)、酸素が少ないと暗い赤色(静脈血)に見えます。

私たちの生命を支える酸素運搬の仕組みが、血液の「色」という形で現れていると考えると、改めて体の仕組みの不思議さや偉大さを感じられるのではないでしょうか。身近な血液の色一つにも、生物学と化学の基礎が深く関わっているのです。