リブートサイエンス

大人のための再学習:なぜ空に雲ができるのか?(地学の基礎)

Tags: 地学, 気象, 雲, 物理, 基礎

私たちが毎日見上げる雲の不思議

私たちは毎日、様々な形の雲を空に見ます。ふわふわとした綿のような雲、空全体を覆う灰色の雲、遠くで稲妻が光る積乱雲など、その姿は様々です。しかし、「なぜ、あの空に雲ができるのだろう?」と、改めて考えたことはありますでしょうか。

若い頃に理科で習ったような気もするけれど、詳しくは思い出せない。そんな方もいらっしゃるかもしれません。この「リブートサイエンス」では、身近な自然現象である「雲ができる仕組み」について、大人の視点から基礎を再学習していきたいと思います。難しい数式は出てきませんので、どうぞご安心ください。

雲の正体は「小さな水の粒」または「氷の粒」

まず、雲とは一体何でできているのでしょうか。雲は、空気中に浮かんでいる非常に小さな「水の粒」や「氷の粒」がたくさん集まってできたものです。

私たちの周りにある空気の中には、目に見えない「水蒸気」が含まれています。この水蒸気が冷やされて、液体である水や固体である氷に変化(相転移といいます)し、それが集まって雲として見えるようになるのです。

雲ができるためのステップ

では、どのようにして空気中の水蒸気が、目に見える水の粒や氷の粒に変わるのでしょうか。これにはいくつかの重要なステップがあります。

  1. 水蒸気を含む空気が上昇する 地上の空気は、太陽の光で温められた地面に温められたり、山に沿って吹き上がったりすることで上昇することがあります。

  2. 上昇した空気が冷やされる 空気は上空に行くほど気圧が低くなります。気圧が低い場所では、空気は膨張します。この時、周りから熱を奪うため、空気自身の温度が下がります(これを断熱膨張といいます)。風船の空気を勢いよく出すと、その出口が冷たくなるのと同じような現象です。

  3. 空気が「露点」に達する 空気には、温度によって含むことができる水蒸気の量の上限が決まっています。温度が高いほど、より多くの水蒸気を含むことができます。空気が上昇して冷やされると、やがてその温度で含むことができる水蒸気の限界量に達します。この時の温度を露点(ろてん)と呼びます。さらに冷やされると、含みきれなくなった水蒸気が出てくることになります。

  4. 水蒸気が「凝結」または「昇華」する 露点に達してさらに温度が下がると、気体の状態だった水蒸気は、液体の水(水の粒)になったり、温度が非常に低い場合は直接固体の氷(氷の粒)になったりします。この変化を凝結(ぎょうけつ)または昇華(しょうか)と呼びます。

    この時、空気中に漂っている非常に小さなチリやホコリ、微生物などが核となります。水蒸気はこれらの「核(凝結核昇華核)」の周りに集まって、水の粒や氷の粒に変わるのです。

  5. 水の粒や氷の粒が集まって雲になる こうしてできた非常に小さな水の粒や氷の粒(直径は髪の毛の100分の1程度!)がたくさん集まると、それが私たちの目に見える「雲」となるのです。これらの粒は非常に軽いため、すぐに落ちてくることはなく、上空に浮かんでいられるのです。

大人の視点で考える雲

雲ができる基礎的な仕組みは、水蒸気を含んだ空気が上昇して冷やされ、凝結・昇華することにあります。これは、私たちが窓ガラスについた結露や、冷たい飲み物のグラスの周りにつく水滴を見る現象(これも空気中の水蒸気が冷やされて水に変わる凝結です)の、大規模なものです。

雲の種類が多様なのは、空気が上昇するスピードや湿度、温度などが場所や時間によって異なるためです。積雲のように縦に大きく発達する雲は、強い上昇気流によってできますし、層雲のように空全体を覆う雲は、比較的穏やかな上昇や、冷たい空気の上に暖かい空気が流れ込むことなどでできます。

また、雲は地球の気候にも大きな影響を与えています。太陽の光を反射したり、地表からの熱を閉じ込めたりと、その種類や量によって地球全体の温度調節に重要な役割を果たしているのです。近年の気候変動の研究においても、雲の振る舞いを理解することは非常に重要なテーマの一つとなっています。

まとめ

今日は、「なぜ空に雲ができるのか?」という素朴な疑問について、

といった基本的な仕組みを再確認しました。

身近にある現象も、その裏には様々な科学的な原理が隠されています。普段何気なく見上げている雲も、少し見方が変わったのではないでしょうか。

「リブートサイエンス」では、このように日常生活にある科学の基礎を、ゆっくりと紐解いていきます。次の記事もお楽しみに。