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大人のための再学習:なぜグラスに水滴がつくのか?(物理・物質の基礎)

Tags: 物理, 物質, 状態変化, 水蒸気, 凝結

冷たい飲み物を入れたグラスに水滴がつくのはなぜでしょうか

暑い日に冷たい飲み物をグラスに注ぐと、グラスの表面にいつの間にかたくさんの水滴がついています。触ってみると、確かに水です。この水滴は、グラスの中の飲み物が漏れ出しているわけではありません。では、一体どこから現れたのでしょうか。

この現象は、空気中に含まれる「水蒸気(すいじょうき)」という目に見えない気体の水と、温度が関係しています。小学校や中学校で少し学んだ方もいらっしゃるかもしれません。この機会に改めてその仕組みを見ていきましょう。

空気中には「水蒸気」が含まれています

私たちの周りにある空気は、窒素や酸素など様々な気体が混ざり合ってできています。実は、その空気の中には、常に少量の「水蒸気」が含まれています。水蒸気とは、水が蒸発して気体になったものです。お湯を沸かすときに立ち上る湯気は、水蒸気が冷えて小さな水の粒になったものですが、本当の「水蒸気」は透明で目には見えません。

空気中にどのくらいの水蒸気が含まれているかは、場所や天気によって異なります。この水蒸気の量が、湿度として表現されることもあります。湿度が高いというのは、空気中にたくさんの水蒸気が含まれている状態です。

温度によって空気が含むことのできる水蒸気の量が変わります

空気は、温度によって含むことのできる水蒸気の量に限界があります。この限界の量を「飽和水蒸気量(ほうわすいじょうきりょう)」といいます。

重要なのは、空気の温度が高いほど、より多くの水蒸気を含むことができるということです。逆に、空気の温度が低くなると、含むことのできる水蒸気の量は減ってしまいます。

グラスの表面で何が起こるのでしょうか

さて、ここに冷たい飲み物を入れたグラスがあるとします。グラスの表面は、中の冷たい飲み物によって冷やされています。この冷たいグラスの表面に触れている周りの空気も、冷やされます。

周りの空気が冷やされるとどうなるでしょうか。そうです、その空気が含むことのできる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)が減ってしまいます。

もともと空気中に含まれていた水蒸気の量が、冷やされた後の空気が含むことのできる量を超えてしまうと、行き場を失った水蒸気は気体のままでいることができなくなります。そして、液体の水に姿を変えるのです。この現象を「凝結(ぎょうけつ)」といいます。

グラスの表面についた水滴は、このようにして空気中の水蒸気が冷たいグラスによって冷やされ、液体の水に「凝結」した結果なのです。

身近な場所でも同じ現象が

この「凝結」という現象は、グラスの水滴だけでなく、私たちの身の回りの様々な場所で起こっています。

例えば、冬に窓ガラスが曇って水滴がつく「結露(けつろ)」も同じ原理です。温かい部屋の空気に含まれる水蒸気が、外の冷たい空気で冷やされた窓ガラスに触れて冷やされ、凝結して水滴になります。

また、朝方の地面や草木につく「露(つゆ)」も、夜の間に地表近くの空気が冷やされて、含まれていた水蒸気が凝結したものです。そして、空の高い場所で空気中の水蒸気が冷やされて凝結し、小さな水の粒や氷の粒が集まったものが「雲」です。さらにこれらの粒が集まって大きくなると「雨」や「雪」として降ってくるのです。

グラスの水滴という小さな現象の裏には、湿度や温度と水蒸気量の関係、そして「凝結」という水の物理的な性質が隠されています。この基礎を知ることで、日常の様々な現象や、地球上の水の循環といった大きなシステムまで、少しずつ理解が深まっていくのではないでしょうか。

まとめ

私たちの日常の小さな不思議から、大きな科学の仕組みが見えてくるのは面白いですね。