大人のための再学習:なぜ私たちは呼吸するのか?(生物・化学の基礎)
毎日、当たり前に繰り返される「呼吸」
私たちは普段、自分が呼吸していることを意識することはほとんどありません。寝ているときも、本を読んでいるときも、歩いているときも、体は自然に空気を取り込み、吐き出すという作業を繰り返しています。
一見単純なこの動作ですが、実は私たちが生きていく上で、これほど重要なことはありません。では、なぜ私たちは呼吸をする必要があるのでしょうか? ただ空気を出し入れしているだけではない、その深い意味を一緒に見ていきましょう。
呼吸の目的は「エネルギーをつくるため」
私たちが呼吸をする最大の目的は、体が生きて活動するための「エネルギー」をつくるためです。
自動車がガソリンを燃やして動くように、私たちの体も、食べ物から得た栄養素を「燃やして」エネルギーを得ています。この「燃やす」という反応に欠かせないのが、「酸素」です。
空気に含まれる酸素を取り込み、栄養素(主にブドウ糖などの糖)と結びつけることで、私たちの体(正確には体の最小単位である「細胞」)は活動に必要なエネルギーを生み出しています。この細胞の中でのエネルギー生産の過程を、「細胞呼吸」と呼びます。
細胞の中でのエネルギー生産
細胞呼吸は、私たちの体内の細胞一つ一つで行われています。特に「ミトコンドリア」という細胞内の小さな器官が、このエネルギー生産工場として働いています。
- 酸素を取り込む: 肺から血液に取り込まれた酸素が、全身の細胞に運ばれます。
- 栄養素を使う: 食べ物から分解されたブドウ糖などの栄養素が細胞に運ばれています。
- エネルギーを生み出す: ミトコンドリアの中で、酸素を使って栄養素を分解します。このときに、体が活動するためのエネルギー(ATPという物質の形で蓄えられます)がつくられます。
- 二酸化炭素ができる: エネルギー生産の際に、老廃物として二酸化炭素と水ができます。
つまり、私たちが外から空気(酸素)を取り込むのは、体の細胞がエネルギーを生み出すために酸素が必要だからなのです。
二酸化炭素を体から出す理由
細胞呼吸でエネルギーを作る際にできる老廃物の一つが「二酸化炭素」です。この二酸化炭素は、体内に溜まりすぎると体に良くありません。
細胞でできた二酸化炭素は、血液によって肺に運ばれます。そして、私たちが息を吐き出すときに、外の空気へと放出されます。
呼吸は、単に酸素を取り込むだけでなく、体の中で不要になった二酸化炭素を排出するという、非常に重要な役割も担っているのです。
呼吸と私たちの生活
私たちが意識せずに行っている呼吸ですが、その大切さは日常生活の様々な場面で実感できます。
- 運動: 激しい運動をすると呼吸が速くなります。これは、筋肉がたくさんエネルギーを使うため、より多くの酸素が必要になり、同時にたくさんの二酸化炭素ができるからです。
- 高い場所: 高い山に登ると息苦しく感じることがあります。これは、空気中の酸素の量が少なくなるため、一度に吸い込める酸素の量が減ってしまうからです。
- 植物との関係: 私たち人間を含む動物が酸素を吸って二酸化炭素を出すのに対し、植物は光合成によって二酸化炭素を吸って酸素を出します。地球上の生物は、このように呼吸を通じて互いに支え合って生きています。
まとめ
呼吸は、私たちが生きていく上で必要不可欠なエネルギーをつくるために、体内に酸素を取り込み、エネルギー生産でできた不要な二酸化炭素を体外に出すための大切な仕組みです。
肺での空気の交換、血液による運搬、そして体の細胞一つ一つで行われるエネルギー生産(細胞呼吸)という複雑な連携プレーによって、私たちは毎日、当たり前のように活動できています。
私たちの体の中で常に繰り広げられている、この生命の基本ともいえる「呼吸」の仕組みを知ることは、自分自身の体をより深く理解する第一歩となるのではないでしょうか。