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大人のための再学習:なぜ地球には大気があるのか?(地学の基礎)

Tags: 地学, 大気, 地球, 重力, 気象

身近だけれど不思議な存在「大気」

私たちは普段、空気の中で生きていますが、この空気が地球を包んでいる膜のようなものであることを意識することは少ないかもしれません。これを「大気」と呼びます。大気は、私たちが呼吸する酸素を含み、太陽からの有害な光線を防ぎ、さらには地球の表面温度を穏やかに保つ役割も果たしています。

月には大気がほとんどありません。火星にはわずかな大気がありますが、地球の1%にも満たない薄さです。なぜ、私たちの地球には、これほど豊かな大気が存在するのでしょうか。今回は、この地球の大気がなぜ存在するのか、その基礎的な仕組みを学んでいきましょう。

大気とは何か? その主な成分

大気は、様々な気体が混ざり合ったものです。地表付近の乾燥した空気の主な成分は、約78%が窒素、約21%が酸素です。残りの約1%には、アルゴンや二酸化炭素、ネオンなどの気体が含まれています。また、場所によって量は大きく変わりますが、水蒸気も大気の一部です。

これらの気体は、それぞれが非常に小さな粒(分子や原子)でできており、常に動き回っています。本来、気体は空間いっぱいに広がる性質を持っていますから、もし何もなければ、これらの気体は宇宙空間へと飛び散ってしまうはずです。

なぜ大気は地球から逃げないのか? 「重力」の役割

ここで重要な働きをするのが、地球の「重力」です。地球の重力は、私たちの体や身の回りのあらゆるものを地面に引きつけていますが、これは気体の分子や原子にも同じように働いています。

地球の重力は、大気の分子一つ一つを地球の中心方向へ引きつけています。まるで、地球が巨大な磁石のように、空気の粒を引きつけているとイメージしてみてください。しかし、気体の分子は常に動き回るエネルギー(熱エネルギー)を持っています。このエネルギーが大きすぎると、重力の引きつけに逆らって宇宙空間へ逃げてしまうこともあります。

地球の場合、十分な質量のために強い重力を持っており、かつ、地球の表面温度が、大気を構成する主な気体(窒素や酸素など)の分子が重力に逆らって宇宙へ逃げてしまうほどには高すぎない、という絶妙なバランスが取れています。金星は地球より少しだけ小さいですが、非常に温度が高いため、軽い気体(水蒸気など)を宇宙空間に多く失ってしまいました。月は地球よりもずっと軽いため、重力が弱く、大気を保持できませんでした。

つまり、地球に適度な大気がある最大の理由の一つは、「地球が十分な重力を持っていること」なのです。

大気はどのようにしてできたのか? 地球の歴史をたどる

地球が生まれたばかりの頃は、現在のような大気はありませんでした。では、どのようにして現在の豊かな大気が形成されたのでしょうか?

地球は今から約46億年前に、宇宙の塵やガスが集まって誕生しました。この頃の地球は非常に高温で、内部から大量のガスが火山活動などによって噴き出しました。これが原始大気の元になったと考えられています。この原始大気は、主に水蒸気や二酸化炭素、窒素などで構成されていたと推測されています。酸素はほとんどありませんでした。

その後、地球が冷えていくにつれて、原始大気に含まれていた大量の水蒸気が雨となって降り注ぎ、海ができました。二酸化炭素の多くは海に溶けたり、岩石の中に固定されたりしました。

そして、現在の地球大気に欠かせない酸素は、生物の活動によって生み出されました。太古の海に現れた微生物(シアノバクテリアなど)が、太陽の光を利用して二酸化炭素と水から酸素を作り出す「光合成」を始めたのです。長い年月をかけて、この生物活動によって大気中の酸素が増加していき、現在の組成に近い大気が形成されました。

地球の大気は「奇跡」的なバランスの上に成り立っている

地球の大気は、単に重力によって引きつけられているだけでなく、地球の大きさ、太陽からの距離、液体の水が存在すること、そして生命活動という、多くの要素が複雑に絡み合った結果として存在しています。

この大気のおかげで、私たちは呼吸ができ、昼夜の温度差が極端にならず、さらには天気という様々な現象が生まれています。大気は、まさに地球という惑星が生命を育むための、かけがえのない「宇宙服」のようなものと言えるでしょう。

まとめ

地球に大気があるのは、主に「地球が十分な重力を持っているため」です。そして、その大気は地球が誕生してからの長い歴史の中で、火山活動でガスが放出されたり、生物が酸素を作り出したりすることで、現在の組成に変化してきました。

私たちの身近にある空気、つまり大気は、地球の重力と長い進化の歴史が生み出した、生命にとって非常に大切な存在なのです。普段は意識しない大気ですが、その存在の理由を知ると、少し違った視点で空を見上げることができるかもしれませんね。