大人のための再学習:なぜモーターは回るのか?(電気と磁気の基礎)
身近なモーターの不思議
私たちの周りには、たくさんのモーターが使われています。扇風機を回したり、洗濯機を動かしたり、自動車を走らせたり。これらのモーターは、電気の力を借りて物を回転させる、非常に便利な装置です。
でも、電気を通しただけで、なぜ物がクルクルと回り始めるのでしょうか。今回は、モーターが回る基本的な仕組みを、電気と磁気の関係から見ていきましょう。
電気と磁気は「仲良し」
モーターの動きを理解するには、まず「電気」と「磁気」の関係を知ることが大切です。皆さんもご存知のように、磁石は鉄などを引きつけたり、別の磁石と反発し合ったりします。これが磁気の力です。
そして、科学の歴史で発見された重要なことの一つに、「電気が流れると磁気が発生する」という性質があります。例えば、電線をぐるぐると巻いたもの(これを「コイル」と呼びます)に電気を流すと、そのコイルはまるで磁石のように振る舞うのです。この、電気を使って作る磁石を「電磁石」と呼びます。
逆に、「磁石の近くで電線を動かしたり、磁界(磁気の力が及ぶ範囲)を変化させたりすると、電気が生まれる」という性質もあります。発電機は、この原理を使って電気を作り出しています。
モーターが回る「力」の正体
モーターが回る仕組みの核となるのは、「電流が流れている導体(電気を通す物)は、磁界の中で力を受ける」という性質です。
想像してみてください。磁石のN極とS極の間に、電線を置いたとします。そして、その電線に電気を流すと、電線は磁石の力によって、ある方向に押し出されるのです。電気の流れる向きや磁石の向きを変えると、電線が受ける力の向きも変わります。
この力を利用しているのがモーターです。
モーターの基本的な仕組み
簡単なモーターは、主に以下の要素で構成されています。
- 磁石: 固定された磁界を作る役割をします。これは普通の磁石の場合もあれば、電磁石の場合もあります。
- コイル: 回転する部分(これを「回転子」や「ローター」と呼びます)に取り付けられた、電線をぐるぐる巻いたものです。ここに電気が流れます。
- 整流子(せいりゅうし)とブラシ: コイルに電気を供給するための部分で、コイルが回転しても電気の流れる向きを切り替える役割をします。
仕組みを簡単に説明します。
- 固定された磁石(界磁磁石)の間に、コイルが置かれます。
- コイルに電気を流すと、コイル自身が電磁石になります。
- この電磁石(コイル)と、固定された磁石の間に、引き合う力や反発し合う力が生まれます。
- この力によって、コイルは回転を始めます。
- コイルが少し回転すると、整流子とブラシの働きによって、コイルに流れる電気の向きが自動的に切り替わります。
- 電気の向きが変わると、コイルがつくる電磁石のN極とS極も入れ替わります。
- すると、固定された磁石との間に働く力も向きを変え、コイルはさらに回転を続けようとします。
この「回る→電気の向きが変わる→さらに回る」という繰り返しによって、コイルは止まることなく回転し続けるのです。ちょうど、自転車のペダルを漕ぎ続けると車輪が回り続けるように、モーターも力を受け続けることで回転を維持します。
日常生活でのモーター
私たちの身の回りにある電気製品の多くに、このモーターが組み込まれています。
- 扇風機: モーターが羽根を回して風を送ります。
- 洗濯機: モーターが洗濯槽を回して衣類を洗ったり脱水したりします。
- 冷蔵庫: モーターがコンプレッサーを動かし、冷たい空気を作ります。
- 掃除機: モーターがファンを回して空気を吸い込みます。
- 電気自動車: 大きなモーターがタイヤを回して車体を動かします。
このように、モーターは私たちの生活を便利にしてくれる、非常に重要な技術の基礎となっています。
まとめ
モーターが回転するのは、電流が磁界の中で力を受けるという物理学の基本的な法則に基づいています。コイルに電気を流して電磁石を作り、固定された磁石との間に生まれる力を利用して回転を生み出し、さらに電気の向きを上手に切り替えることで、回転を継続させているのです。
電気と磁気の関係、そしてそこから生まれる力という、中学や高校の理科で習った基礎的な原理が、実は私たちの身の回りにある様々な機械を動かす力となっているのです。少し難しく感じたかもしれませんが、身近な機械が動く原理を知ることは、科学への興味を深めるきっかけになるかもしれません。